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 ★トレーニングのヒント (鈴木 彰)  目 次 へ
 

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​ 020~023(2000.6.16~7.7配信) 「90%ラン」


 今回からは幻の90%ラン!?に突入します。正確には90〜95%くらいの水準が適切なペースということになるのですが、前回ご紹介したような理由で、市民ランナーの方の目標ペースの設定の場合、95と言ってしまうとレースペースそのものに限りなく近づいてしまいますので90%くらいに留めてお
きましょう。また、このトレーニングは、やや高度な部類に入りますので80%ランで充分記録の向上が望めそうな場合には無理に実施する必要はないでしょう。

 さて、段階的なトレーニングということから、80%ランをスッパリ打ち切って、90%ランへと完全移行しようと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうものではありません。段階的に移行するのは、あくまでもバランスであって、その配分の問題です。

 これまで75%以下のLSDのようなトレーニングばかりしていた人、それから90%以上のハァハァ、ゼェゼェ式トレーニングばかりしていた人は80%ランを導入することで、だいぶバランスが整ってきているのではないかと思います。(まさか今度は毎日80%でやってないでしょうね?)もちろんレベ
ルにもよりますが、ここまでのトレーニングは、ポイントとしての80%ランと半休養的な75%以下のランと1:1くらいの割合で充分(ポイントをもっと減らしてもOK)です。ここで90%ランを取り入れようという場合には、80%と90%との割合を1:1か2:1くらいにしてください。かなりしっ
かりと週に6日トレーニングしているといった中級以上のランナーの場合なら90%を1回、80%を2回、そして75%以下を3回といった感じで組み立てると、かなりいい感じになってくるのではないかと思います。まあ、そんなに厳密に考えなくても80%と90%を週に1回づつくらいでもOKですが。

 90%ランは、80%ランとセットで実施してはじめてその効力を発揮します。あくまでも80%が土台で90%はその上に築き上るもの。しかも、ある程度、その土台が出来上がってから移行しなければ何にもならないでしょう。
 90%の方がキツそうだから効率良く強くなれるんじゃないかと、そればっかりやっても上手く行きません。そういうことですから、いかなる理由でも90%が80%に優先することはないのです。1週間に何日も走れない。ポイント練習を何回もできない。充分な距離を走る時間がない。だから80%をはしょ
って90%で効率良く…。残念ながらそういう訳にはいきません。時間的、体力的に余裕がないのなら80%ランを徹底しておこなってください。つまみ食い的にいろいろ取り入れちゃうトレーニング計画は、なんとなくバリエーションに富み、工夫されているような気になるものですが、思ったほど効果はあり
ません。

 そういうことで、やらなければやらないで何とかなる、やればやったで効果が大きい、幻の90%ラン、続きは来週!

 ※ ※ ※

 ぼーっと読んでると、いつのまにか90%ランの話になっています。

 90%ランの考え方や取り組み方は、前回で大方ご理解いただけたのではないかと思うのですが、より具体的なトレーニング方法についてもお話ししていきましょう。

 方法と言っても、80%を90%にするだけだろう、と思うところが素人考え。これがいろいろと違います。何と言っても強度が違えば、変わってくるのが距離ですね。そう、どれくらい走ればいいのか、という問題です。80%の時はレース距離の1.2〜1.6倍の距離をトレーニングで実施する、という
ことでした。それでは90%は、というと…これが意外と難しいところです。

 レースペースの90%ですから、楽ではないものの、頑張れば相当な距離をこなすことは十分可能です。だからといって、ハァハァ・ゼィゼィ、ヒーヒー・フーフー言いながらヘロヘロになるまで取り組むようなトレーニングでもありません。週に1回程度ですから、レース距離の1.0〜1.2倍(10Km
なら10〜12Km)くらいでやることもできるのですが、この負担度にかなりの個人差=能力差があります。

 皆さん、スピードとかスタミナの能力差は経験から評論家並みにご存知のことかと思います。ところが80%・90%で持続する能力というのはどうでしょう。考えたこともないのではないでしょうか。これが結構、ランナーの実力を左右するところがあり「スタミナは十分あるのだが、いくらやってもスピー
ドがついてこない」系の人というのは、往々にしてこの水準の力が大きく劣っている場合があります。5Kmや10Kmのベストタイムの行き詰まりなんかも結構そうですね。

 そんなわけで、ベストタイムや目標タイムが同じくらいだからといって90%で持続できるラインが必ずしも同じとは限りません。取り敢えずのところは0.8倍(レース距離が5Kmなら4km、10Kmなら8Km)くらいを目安にして実施してみましょう。これが楽チンに行けるか、ヘロヘロになるかは
やってみてのお楽しみ!

 もちろんタイムトライアルではありませんからゴールタイム(平均タイム)でつじつまをあわせるような走りではなく、最初から最後まで設定したイーブンペースで押し通すことが重要です。これが出来ないということであれば、やはり90%水準の持続能力が低いということも考えられますが、設定ペースが
速過ぎるということもあるかも知れません。これは80%水準でやっているうちにはなかなか気付きにくいことですね。くどうようですが、タイムトライアルではありませんので、1回か2回チャンジして、出来た!出来ない!という問題でもありません。確実にトレーニング計画の中に組み入れ、ある程度の余
裕を持ってキッチリ消化していくことが重要です。

 90%でも腹八分。

 ※ ※ ※

  90%ラン、やってみたら結構キツかった、走り切れなかった、という方も多いのではないでしょうか。本当にくどいようですが、ヘロヘロでもなんでも走り切れればそれでOK、というものではありません。ゆとりと余裕を持って消化できるようになることがハイペースを持続する能力を向上させることにな
るのです。

そんなこと言ったて、やっぱりキツい、、けっこうキツい、まぁまぁキツい、1回じゃキツくないけど毎週じゃキツい、って人のためにご教授しますが、なんのことはない、分割してやってみましょう。

 10Kmの0.8倍の距離8000m。これを2回に分けて4000m(4Km)×2本でやってみるのです。ペースはもちろんレースペースの90%。
 1本やった後、2本目までの間は適当でいいです、最初のうちは。1000mくらいのJogでもいいし、10分くらい休憩していいでしょう。もちろんウォークでつないでも構いません。とにかく2本とも途中で失速することなく、設定通りのペースで余裕を持って走り切ることが重要です。

 こういうのをインターバル形式っていうのはご承知の通り。ところが皆さん、インターバルっていうと、これはもう、たいへんなもんだってことで、全力でやるもの、スピード練習としてやるものだと決め付けている方も大勢いらっしゃるようです。インターバル・トレーニングについては、18号の『スポーツ科特隊』で山本先生にご解説いただいていますが、それ風にいうと、これは「有酸素系のエネルギー機構を改善するロングインターバル」になります。苦しくないと、強い強度でやらないと効果がないのではないかと最初から思い込んでいる方も多いのですが(特に競技者上がりの人!)その目的によって、様々
な方法があるという認識が必要ですね。

 分割してやっても効果があるのか、どうかというと、あると言ってよいでしょう。一度にやれればそれに越したことはありませんが、「一度にできないものは分けてやる」。これはセオリーです。長距離走・マラソンは、トレーニングの苦しさに慣れてナンボのモノと考えている方は眉をひそめるかも知れませ
んが、人間スタミナとスピードの二極だけで走っているわけではありません。

 また、分割走には、確実に距離を踏むという、もう一つの重要な利点があります。ここでいう距離踏みとは、走り込みの中で、ペースに関わらず長く走って有酸素能力の向上を狙うものとは違います。距離踏みには「足を作る」という目的がありますが、いわゆる走り込みの中での距離踏み、足作りというのは
「レース距離を走り切るための脚筋力」を養成することであるといえるでしょう。このような力をつけるためには、ペースに関わらず、ゆっくりでもなんでも、とにかく長い距離を走ることが有効な手段となります。LSDの利点はこのようなところにありますね。

 これに対して、今、問題にしているのは、「レースペースを維持するための脚筋力」なのです。実はこのあたりのことは、一流から三流まで、世界中の指導者や研究者、競技者の間で見解の分かれるところであり、「そうだ」と断言する人、「そんなことはない」と言い切る人、「そんなことは考えたこともな
い」という人とに見事に分かれます。読者の皆さんの中でも、はっきりと自分なりの根拠で「そんなことはない」と言い切れるのであれば、これより先はあまり考えていただかなくても結構ですが、おそらくほとんどの方は3番目のグループに入るのではないでしょうか。このような理念なくして方法論の展開は
考えようもないのが本当のところで、次週以降、もう少し詳しく突っ込んでいきましょう。

 ※ ※ ※
 
 「レースペースを維持するための脚筋力」―こういうものが「有る」と仮定して、いえ、確信してお話しを進めていきましょう。

 より速く走る、スピードをあげるためには、より強靭な筋力が必要であるということはご理解いただけるのではないかと思います。それではLSDはどうかというと、ゆっくりだからそんなもんは必要ないのかといえば、やっぱりゆっくり長く走るための筋力が必要です。

 短距離選手が長い距離を速く走れなかったり、長距離選手が短い距離を速く走れないのは、主に心肺機能の能力やエネルギーの生成の違いによるものであるとされています。このこと自体は間違いのないことなのですが、それでは人間、心臓や肺だけで走っているのだろうか、ということになります。言うと、
これはもちろん足を使って走っているわけなんですが、それではこの大切な両足ちゃんには、どんな能力を高めることが必要なのかということになると、これが意外にも良く分っておらず、専門家でも、ああだのこうだの言っている人や何にも考えていない人がいっぱいて明らかになっていないのが実情です。

 一つの考え方として、「心肺機能を高めるようなトレーニングをして行く中で、必要な足の力は、それに伴い自ずと養成されてくる。だから余計なことを考える必要はないのだ。」というのがあります。これは一理ないでもないです。
 というよりも、一流選手の多くはこのタイプではないかと考えています。始めから「心肺機能と脚筋力がバランス良く養成されて行くような資質」を持っていて、心肺機能を高めるようなトレーニングを継続していけばトントン拍子に力を付けて行くタイプ。だからこそ一流になれたという局面も否定できないの
ではないかと。逆に言えば、一流選手や一流選手ばかりを指導してきたコーチなどは、こんなことは考える必要のないことになるわけでね。

 ところがどっこい、私のようなレベルの競技者や、市民ランナーのような方は、どうもこのアンバランスが目立つ気がします。もともとトレーニングの主目的が心肺機能を高めることにあるのですから、筋力的資質に欠ける我々三流は、自ずとその格差が広がって行きます。心臓さん達は一生懸命頑張っている
のに、足が足を引っ張る(?)状態。ん、ん!自分もそうだなって方、結構いらっしゃいますでしょ?

 日本式マラソントレーニングでは、それでもLSDなどの走り込みという中で、長い距離を走リ続ける耐性を脚筋につけることはできます。そんなんで、フルマラソンのタイムでも5時間が4時間に、4時間が3時間にと更新していくことは、そのような力だけでも十分可能といえば可能です。しかし、サブス
リーも2時間40分台とか、あるいは5Kmや10Kmレースなどになると、それだけではちょっとキツくなってきますね。こういう状態を「スピードが無い」の一言で片付けてしまうことも良くあります。しかし、もっと正確に言えば、「スピードがつくようなトレーニングをしていない」更に詳しく言うと「
ハイレベルのスピードを維持するような脚筋力を養成するようなトレーニングをしていない」と言うこともできるでしょう。「レースペースを維持するための脚筋力」の養成が不十分なのです。それじゃあ、スピード練習か!?って話になりますね。確かにそれも重要なのですが、イチバンではありません。スピ
ード練習ができる足を先に作っておかなければスピード練習はあまり高い効果は期待できません。そのための足づくりが80%ランであり、90%ランであったわけですね。ついでに言っておくと、これが十分できていれば、スピード練習なんかしなくても、ソコソコまで行けるはずですよ。

 …って言っておきながら、次回はお待ちかね?スピード練習!!