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無料メールマガジン
BEST RUN!archive
「BEST RUN!」は、NPO法人あっとランナー(@runner)が配信する無料メールマガジンです。
このページは、2000年2月の創刊以来の記事を集めたアーカイブです。
全記事の公開まで編集の時間を要しますのでご了解ください。
当時配信したままの内容・記述で掲載しています。配信後、一般的な理論・方法論的な変更や、筆者の見解の変遷等がある場合もありますのでご留意ください。
★トレーニングのヒント (鈴木 彰) 目 次 へ
011~012(2000.4.11~4.18配信) 「スピード」
マラソンのスピード化・高速化が言われ久しくなります。「うさぎとカメ」のカメのような走りをするのがマラソンだと言われたのははるか昔。今はウサギが先行逃げ切りを演じる時代だということでしょうか。
惜しくも五輪マラソン代表は逃したものの「トラックの女王」、弘山晴美選手は、まさにトラックのスピードを、そのままマラソンに持ち込んだランナーです。中距離上がりの弘山選手ですが、中学時代には短距離が専門で、100mを12秒台で走っていたというから驚きです。このようなスピードが現在の
弘山選手の大きな武器になっていることは疑う余地はありません。おそらく世界トップレベルのスピードランナーは、皆、そのような能力を持っていると思われます。
一方、ご存知、キューちゃんこと高橋尚子選手ですが、「高速マラソンランナー」であることは間違いありませんが、トラックの実績に乏しく、「スピードランナー」であるとはちょっと言い難いですね。時代の最先端を行く高速ランナーが、スピードランナーではない?これがマラソンの難しいところです。
キューちゃんは5000mなんかをやっても、そんなには速く走れません。それでもハーフマラソンくらいになると驚異的なタイムを出してきます。このへんが、弘山選手のような「5000mが速いから、スタミナを付けるとハーフもフルも速い」といったような分かりやすいスピードランナーの傾向とは一
味違っているところです。
「スピードがなくてもスタミナがあればマラソンはイケる。」というのが従来のカメさんタイプで「スピードがあってスタミナもあればもっとイケる。」というのが、これからのスピードタイプ。そして「驚異的なスタミナがあればスピードがなくてもイケる。」というのがキューちゃんタイプでしょうか。
ちなみに、ここで言う驚異的なスタミナというのは、どこまでも、いつまでも走っていられる超持久力みたいなものとは違います。このことはウルトラマラソンやスパルタスロンなんかの選手が、フルはそんなに速く走れないということからもお判りですね。
そんでもって「自分もキューちゃんタイプかな…。スピード練習なんか、いくらやっても効果ないけど、マラソンならソコソコいけるもんなぁ…。」というランナーの方も大勢いらっしゃることでしょうけど、残念ながらハッキリ言うと、こういうのは普通のカメさんタイプの場合がほとんどです。
「カメはカメなりに一生懸命やってんだけど、所詮カメ…。」と、諦めてしまっているランナーもこれまた多いのですが、いざとなれば、かなりのスピードで走り出すカメさんの特性をご存知ないのではないでしょうか?「スピード練習なんか、いくらやっても…」というのは「基本的にスピードというものを
考え違いしている」とか「適切なスピード練習になっていない」場合がほとんどと言えます。
遅いカメは速いウサギにはなれなくても、やり方によっては速いカメにはなれるかも知れませんよ。
* * *
マラソンのベストタイム / 10000m(10Km)のベストタイム
この式から出てくる数値をマラソンの「持久係数」といいます。マラソンは10Kmの4.2195倍の距離ですから、持久係数=4.2195ということは、10Kmのスピードでそのままマラソンを走り切ってしまうということになりますが、普通そういう人はいません。
ちょっと考えればわかると思いますが、持久係数は10000mのスピードがあるほど高い数値になり、スタミナ型の選手の方が低い数値が出てきます。もっとも、どのくらいの数値がどうなのかという評価も定まっていませんのでこれはあくまでも一つの目安としての指標に過ぎません。だいたい10000
mのベストを出した時期と、マラソンのベストを出した時期がかけ離れていれば、あまり意味のある数字とも言えなくなってしまいます。
ただ、考え方として、マラソンのベストタイムは、持久係数をあげるようなトレーニングをすることか、持久係数を保ったまま10000mのタイムをあげるようなトレーニングをすることで向上していくであろうということが言えると思います。理論的には…。
前回、ご紹介した高橋尚子選手などは、際限なく持久係数を上げていくような方向で、ここまで来たような感じで、かなり高いと思われる持久係数に、更に向上する余地がありそうなところが驚異です。
弘山晴美選手の場合は、10000mのタイムは十分なわけですから、同じく今後、持久係数を上げていくことでとんでもない記録も期待できそうです。
さて、それでは市民ランナーの皆さんの場合はどうかと言うと、意識的である、なしに関わらず、持久係数を上げていくようなトレーニングが中心であることがほとんどであると思われます。ただし、もともとの身体の能力全体の水準があまり高くないために、結果的には、それでも10Kmのベストタイムも
一緒に向上していくことも多いかとは思いますが。
レースの後半に大きく失速するようにスタミナの無い場合はともかく、ベテランランナーの場合、持久係数がいっぱいいっぱいでタイムの上値が重くなっている方も少なくないような気がします。そうすると、次はスピードアップしかない!ってことで、インターバル走がどうのこうのって話が始まるですが、
そこんとこがちょっと違うんですね。多くの方は、どうしても、スタミナかスピードか・LSDかインターバルか、って二極化して考えてしまうのですが、いくらデジタルの時代だからって言っても、もっとアナログ的な考え方をした方が良い結果が出てくるものです。
「マラソンためのスピードをアップする」ということと「スピード練習を取り入れる」ということは必ずしも同じではないのです。スピード練習でなくてもマラソンのスピードはアップしますし、スピード練習は必ずしもスピードアップのために行うとも限りません。
あ・あ・あ…また、ややっこしくてゴメンナサイ。でもめげずに続けて読んでくださいね。
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