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 ★トレーニングのヒント (鈴木 彰)  目 次 へ
 

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​ 024~029(2000.7.14~8.25配信) 「スピード練習」

 なんだかんだ引っ張ってるうちに春―夏のシーズンも終わりに近づいて来てしまいましたね。途中途中で結構質問が来るものですから、それに答える形で寄り道、回り道が多くなってしまいました。(皆さん、よく読んでますね、感心するわな…)仕方ないのでテンケー(10K)中心の方は秋―冬のシーズン
に活かしてください。ここが終われば、いよいよマラソンに向けた走り込みのお話しに入る予定です。

 はい、そんなんで、こんなんで皆さんお待ちかね、期待と不安いっぱいのスピード練習編です!

 「スピード」とは何か、というと、これまでやってきた「スタミナ」がなんなのかよく分らないのと同じかそれ以上によく分りません。このへんの誤解や混乱が、またまたそれ以上に「スピード練習」を混迷させている要因となっているのでしょう。

 ・スピード練習をやるとスピードがつくのか?

 ・スピードがつくとベストタイムが上がるのか?

 ・スピード練習をやらないと強くなれないのか?

 ・スピード練習は強い選手になってからやるものなのか?
 

 これらの答えは、すべて「必ずしもそうとは限らない」といったファジーなものです。ひゃあ、難しい!


 マラソンのスピード化が言われるようになって久しいのですが、これって、皆さん正しくご理解されているのでしょうか。

 マラソンを3分00秒/1Kmで走り切ると、2時間06分35秒。日本最高記録より少し速いタイムです。これは10Kmを30分00秒平均で走り通すというハイペースなわけなのですが、ここで、10000mのベストタイムが27分台の選手と、28分台、29分台との選手では、その余裕度が違うだ
ろう、ということが予想されます。昨今の国際大会では最初の10Kmを29分半くらいでも平気でかっとんじゃいますが、10000ベストが28分切るくらいの選手にとっては特に驚くほどのペースではありませんね。しかし、いくらスタミナ型とはいえ、ベストが29分ちょいくらいの選手がこれについて
いくのはね…。これがマラソンとはいえ、スピードの違いと言われるものです。

 それでは、その10000mですが、28分を切るくらいで走るためには、5000mが13分ちょっとの選手の方が、13分のお尻くらいでやっと走る選手よりもかなり余裕があるはずだ、と考えますね。そして5000mを13分ちょっとで行くためには3000mを7分台で行く必要がある、そしてその
ためには1000mを2分20秒くらいで…ってやっていると、なんだ、結局100mを一番速く走れる選手がマラソンも勝つのか!?ってことになるのか、ならないのか―あ・あ・あ・難しい…!

 実際にはスタミナが絡んでくるので、ストレートにこのようにはならないのですが、時代と共にこの傾向が強くなってきているのは確かです。昨今の男子マラソンの急成長は、26分から27分の頭で走らないと通用しなくなってしまったアフリカの2流どころ(?)の大量流入が一つの要因であるといえるで
しょう。

 先日のサロマ100Kmで、安部友恵選手(旭化成)が驚異的な世界最高記録を樹立しましたが、あれも同じことですね。1Kmあたり、5Kmあたり、10Kmあたり、なんでもいいですけど、そのスピード(ペース)の水準が今までの選手に較べて図抜けているわけです。まさにウルトラにフルのスピード
を持ち込んだと言えるでしょう。恐るべし、あべちゃん…。

 いつものように話がそれましたが、ここでは「スピード」はペース、速度と同じような意味で考えていただきたいと思います。スプリントとはちょっと違いますね。速いペースをどこまで持続できるのか―これが近代マラソン、そしてそのためにやるのがスピード練習!…なんでしょうか??

 ※ ※ ※

 スピード練習が、スピード(速度、ペース)を上げて、ハァハァ、ゼィゼイやるものであるとすれば、それは一体、何を、身体のどのような機能を向上させようとしているのかをしっかりととらえる必要があります。いつも言っているように、「ランニングは苦しんだから、もっと苦しいのに慣れときゃ、本番
は楽になる」といった考え方は今や無形文化財級です。ほんじゃあ、なんでまた、わざわざレースのペースかそれ以上で走らなければならないのかというとこれは第一に、無酸素能力といわれる能力を向上させるためであることがあげられます。

 ちなみに有酸素というのは、ランニングのようにスースー・ハーハー、酸素を取り入れながら続ける運動のこととで、エアロビックと言われるものです。
 エアロビって言うと、=ダンスって思っちゃう人も多いでしょうけど、ゆっくりのランニングも立派なエアロビ、エアロビック・ランってことになります。
 ただ、有酸素では、ある一定以上のパワーは出すことができません。従って、あるラインを越えてスピードを上げることは出来ないのです。有酸素的な能力を向上させることによって、ゆっくり長くいつまでも走れるようにはなりますが、あるレベルから、それ以上速く走ることは難しくなってきます。そうする
と「なんだ、速くなるためにはやっぱり無酸素で、ハァハァ、ゼィゼイやんなきゃダメなんじゃないか!」ってことになりそうですが、まぁ、あわてない、あわてない。

 この「ある一定」とか「あるレベル」というのが、どのくらいなのかというと、これこそが個人の能力、走力の差であると言えます。それを向上させるために80%だの90%だのって長い間やってきたわけです。これは長い年月をかけてしっかりやると、実はかなりのところまで向上します。無酸素のパワー
は、こうした下積みの土台の上にポンと乗っけるおトクなものですが、こちらの方は誰でも上積み幅が限られています。


             ◇  ◇  ◇


 基本給が月30万円、ボーナスが年120万円の人がいたとします。年収で合算すると、480万で月々の平均は40万円。これは、基本給30万円+ボナース10万円分ってことになります。ここの会社では、本人の地道な努力で基本給はかなりのところまでアップされます。またボーナスは実績でガンと上
がることもありますが、年間で180万円が上限と定められています。

 はい、このお話しを、基本給=有酸素能力・ボーナス=無酸素能力・平均月収=レースペースってことで当てはめて考えてみてください。
 

 平均月収が同じくらいでも、その内訳はいろいろだろうなってことは分りますね。また、所得を向上させて行こうとした時に、地道にコツコツ基本給を上げていくのか、ボーナスアップを狙っていくのか。また、その上げ幅がどのくらい残されているのか、ってたくさん考えるわけです。

 そうすると、LSD VS インターバルトレーニングの論争というのも、論争そのものには、それ程意味の無いことがお分かりですね。基本的な部分が違う上に取り組む方針も違っちゃうんだから、全然違うんです。

 ここのエリート社員の高橋さんと弘山さんは、ともに平均月収が80万円くらいになるそうですが、高橋さんは最高水準の基本給、弘山さんの方はボーナスを上限いっぱいもらっているようです。

 ※ ※ ※

 

 「有酸素能力が、かなりのところまでアップするってぇことなら、なにもよ無理して無酸素的な練習なんかしなくたっていいじゃねぇのかぃ!?」― はい、それは一理あります。

 長期的にコツコツとトレーニングを積んで行けば、有酸素的な能力は、おそらく皆さんがお考えになられている以上のところまで向上します。(もちろんそれはただLSDを続けていればいい、というようなものではありません。)それでは無酸素的な能力、あるいはそれを向上させるようなトレーニングは必
要ないのかといえば、それがそうでもないところが、またまた難しいところです。

 たとえば1つのレースに3〜4ヶ月というスパンで取り組んで行くとしましょう。その間、レース距離を、レースペースで走り切れるようになるために、コツコツと走り込みを続け、スタミナをつけていくわけで、1ヶ月、2ヶ月と経つうちに確かにそういう能力が向上していきます。ほんでもって、あと1ヶ
月だ、2ヶ月だ、最後には調整期間も2〜3週間は必要だ、ってことろまできたときに、残りの期間を更にコツコツと走り込むのかどうかってことを考えます。残された僅かな時間に、少しでも有酸素能力を高めようとするのもいいですが、ここまできたら、短期集中「あなたも1ヶ月でスピードレベルが○%ア
ップする!? 奇跡の○○トレーニング」ってことで無酸素的な能力を向上させた方が割りがいいんじゃないか、と思うのが普通です。


 さて、前号のおさらいも兼ねて、整理しましょう。

 無酸素的な能力は、確かに短い期間に大きなパワーを得ることができます。しかし、手に入れることのできる総量に限りがあるために、やればやるほどガンガンどこまでも向上するというものではありません。計画的でコンスタントなトレーニングを続けていれば、おおむね1ヶ月内外で、その上限近くまでは
いっちゃいます。そんなトッポイ能力はあてにならないから最後の最後まで走り込むってスタンスのランナーもいるかもしれませんが、1ヶ月でグーンとパワーアップするってのは考えてみればけっこう美味しい話で、利用しない手、いや足はありません。3ヶ月も4ヶ月も無酸素的なトレーニングを続けても意
味がない。―これはセオリーです。だからといって3ヶ月でも4ヶ月でも全部走り込むというのも短絡的であると言えるでしょう。両方を最大限に活かすトレーニング計画を策定する。これこそが長期的・段階的トレーニングの醍醐味です。

 なかなか思うように時間の取れない市民ランナーの場合、十分な練習ができないままレースまで、あと数週間しかない、というような状況が時より生じます。こういう時には、いかに走り込みができていないといっても、その場を凌ぐには、短期集中的な無酸素トレーニングに頼らざるを得ないということもあ
ります。これはこれで、この時だけなら仕方ないなってこともあると思います。(もちろん、たいした結果は出ないでしょうが…)ところがこういうのが慢性的になってしまって、数週間置きにレースの予定があって、自転車操業的にその場凌ぎの無酸素トレでつなぎまくっているという例も少なくないようです。
こうなると、もうトレーニングの効果も何もあったもんじゃありません。
 
 こういう場合、本当はレース計画、トレーニング計画そのものから見直すと良いのですが、練習はできてなくてもレースには出たい、レースに出るからには良い結果を出したいというわがままな人もいっぱいいますからね。それでも本当に結果(タイム)を出したいのであれば、毎回毎回その場凌ぎでつないで
行ってもあまり効果はないでしょう。 そういう方には、レースは断続的に続いても、トレーニングの方は、長期的・段階的に取り組むという方法をおすすめします。この方法では、トレーニングの初期段階において、レースで良い結果を出すことは、まず無理です。レースシーズンが4〜5ヶ月程あるとして、
最初の1・2ヶ月は自分でも嫌になることもあるかもしれません。しかし、4ヶ月目前後あたりに必ず自分のピークを作ることができ、タイムが上がってくるはずです。「いや、自転車操業でも、いい時はいいんだよ。」って人は、その「いい」と言うレベルの問題があります。その方法で出てくる結果よりも、
多少遠回りしてでも段階的に取り組んで最後に出る結果の方が「もっといい」のが普通です。

 自転車操業的無酸素トレーニングは、レース毎にタイムにチャレンジするという充実感があり、自分ではベストを尽くしている感じもします。それが楽しくてやってるのならば、それでもいいですが、本当に良いタイムを出したい、というのが最優先であるのならば、やっぱり考え直した方がよいでしょう。

 ※ ※ ※

 

 さて、いよいよスピードトレーニングの方法論。一体どのようにやるのか、というところです。「全力で走る」というのも一つの方法ではありますが、全てではありません。相変わらずそう思っている人もたくさんいるようですけど。だいたい長距離走の「全力」っていったい…?

 有酸素能力を養成した上で、後どのくらいまでオマケの無酸素能力を高めたらいいのかっていうと、それはもう、簡単なことで、レースペースに到達するのに必要な分までです。

 「レースペースで練習する」というのは、方法(手段)としては良く行われているトレーニングですが、何のためにやっているのかという、その目的はというと、けっこういい加減だったり、何も考えてないことも多いようです。リズムがどうこうという点から「ペースに慣れる」あるいは「ペースをからだで
覚える」というようなことも良く言われます。これも無視できないことかも知れませんが、そのためだけに時間とリスクをかけて行っているわけではありません。

 レースペースでレース距離を走ってしまえば、それはもうレースと同じになっちゃいますから、そんなことはできないでしょうし、できそうでもやる必要はありません。レースでやればいいんです。どんな時でも、トレーニングはやればやるほど、激しければ激しいほど効果が出ると思い込んで失敗することが
ありますが、さすがにスピード練習だけはそれでも構わないだろう…と思ったら残念、大間違い。やはり適度な設定が必要です。確かにレペティション・トレーニングやタイムトライアルなどはレースさながらのペースで目一杯追い込むことがあります。しかし、それにしてもトップランナーですら、その頻度は
僅かなものですし、レースペースあっての全力走であると言えます。

 一度にやれないのなら、分けてやろうということで、たとえば1000mをインターバル形式で5本繰り返すなんていうトレーニングをするとします。これは非常にオーソドックスな形態で、好んで取り入れているランナーもけっこういらっしゃることでしょう。この時に1本、1本をできる限り全力に近いペ
ースで目一杯行こうと決心して覚悟を決める必要などは全くありません。まぁいいところ目標とする5Kmや10Kmレースペースの100〜105%、行って110%くらいで充分なのです。レベルにもよりますが、1Km当たりのレースペースよりも数秒速い程度でしょうか。

 そもそも5Kmや10Kmをベストの状態で走るというのは、全力の85%から90%を越えるくらいの強度になります。ですから、全力走ではなく、レースペースに対して、これくらいの割合でも全然OK!…って、これで練習するのも決して楽ではありませんが。しかし、それ以上に、とんでもないペース
でかっ飛んで、本数を増すごとに失速していくようなやり方をしている例が少なくないのではないかと思います。最後にヘロヘロになって終わるのがスピードトレーニングって思ったら、またまた大間違い!


 「10Kmのレースペースで1000m(1Km)を走ると、なんだかかなり遅い感じがする。いくらなんでも、これじゃスピードトレーニングって言えないんじゃぁ…」というような場合は、おそらくスタミナ不足、有酸素能力が十分向上していないために、目標とする平均ペースが、自分のスピードに対し
てもかなり低い水準にしか設定できない状態にあるのではないかと思います。

 「10Kmのレースペースで1000m(1Km)を走ると、なんだかとても速い感じがする。いくらスピードトレーニングって言っても、1本やるのがやっとというようでは、ちょっと…」というような場合は、おそらく目標タイムの設定が高過ぎ、現在の有酸素能力の水準と、これから養成しようとしてい
る無酸素能力の水準とのギャップがあり過ぎる状態かも知れません。

 いづれの場合も、十分なスタミナを作り上げてから仕上げにスピードを養成するという段階的なトレーニング計画の有用性をご理解いただくためには良い例ではないかと思います。もしかしたら大概の人はどっちかに含まれちゃうんじゃないですか?

 ニュージーランドの名指導者、A.リディアードは、無酸素トレーニングを「一番最後にやる、あまり重要ではないトレーニング」である旨定義付けていますが、これは、有酸素トレーニングが何よりも重要であり、最優先であることを意味していると言えるでしょう。

 「スピードを生かすも殺すもスタミナ次第」―日本ですら、50年も前からこう言われています。

 奥が深いです。

 ※ ※ ※

 

 Vol.23では「レースペースを維持するための脚筋力」を養成するといったお話をしました。「スピード練習ができる足を先に作っておかなければスピード練習はあまり高い効果は期待できません。そのための足づくりが80%ランであり、90%ランであったわけです」と。うん、我ながら説得力のある
説明ですね。

 ここでは、80〜90%ランの中でもソコソコは「足をつくる」ことができる、ということでした。これは、LSDのようなトレーニングでは、心肺機能を向上させたり、「長く走り続けるための筋持久力」は養成できても、「速いペースを維持するための筋持久力」は養成できないということを示唆したもの
です。

 もともとそういう力のない方(そういう力を養成するトレーニングをしてこなかった方)は、この方法で"ソコソコ"までは行けるはずですが、ソコソコは所詮、ソコソコ。それ以上となると、やはりちょっと厳しくなってきます。ただし、この「それ以上」というのは、相当なレベルになってきますので、本格
的にトラックの5000mや10000m、それにハーフマラソンなんかで記録を狙いたいといったようなアスリートレベルの問題になってきます。ただしフルマラソン以上になると、ちょっと考え方が違ってきちゃいますけどね。(こういうところが「長距離走」と「マラソン」の違いでもあると思います。)
そういうことですから、ソコソコで十分って方は、ここまでで仕上げちゃってもOKだと思います。ここから先は、「それ以上」のランナー向けの奥の深〜い部分です。

 心肺機能的に見た、いわゆるスタミナ・持久力といった部分は、8〜9割の力でトレーニングしていく中で、しっかりと10の力が向上していくという有り難い身体の仕組みになっているようです。ところが「速いペースを維持するための筋持久力」というのは、特に素質に恵まれてでもいない限り、どうもや
った分だけ、8なら8、9なら9の力しか付いてこないな、というのが実感としてあります。ほいじゃあ、レースに必要な力を10とすれば、10のトレーニングをするしかない、レースペースで走るしかないじゃないの!ってのが、スピードトレーニングを必要とするもう一つの理由ということになります。

 5000mの選手なら1000mを5本、10000mなら2000mを5本、20Kmなら5000mを4本…。こんな練習をレースペースでやってるのは、単にペースを体得する、といったような感覚的なものではなく、レースペースでレース距離を行ける筋持久力の養成的な意味合いも強いと思います。
そういう風に意識している選手や指導者は多くないかも知れませんが…。

 足で走るのか、心臓で走るのか。 ― 無意識のうちに心臓だけで走ると思っている、心臓さえ強ければ走れると思っている人ってのは意外と多いのかも知れません。

 ※ ※ ※

 

 Vol.23では「レースペースを維持するための脚筋力」を養成するといったお話をしました。「スピード練習ができる足を先に作っておかなければスピード練習はあまり高い効果は期待できません。そのための足づくりが80%ランであり、90%ランであったわけです」と。うん、我ながら説得力のある
説明ですね。

 ここでは、80〜90%ランの中でもソコソコは「足をつくる」ことができる、ということでした。これは、LSDのようなトレーニングでは、心肺機能を向上させたり、「長く走り続けるための筋持久力」は養成できても、「速いペースを維持するための筋持久力」は養成できないということを示唆したもの
です。

 もともとそういう力のない方(そういう力を養成するトレーニングをしてこなかった方)は、この方法で"ソコソコ"までは行けるはずですが、ソコソコは所詮、ソコソコ。それ以上となると、やはりちょっと厳しくなってきます。ただし、この「それ以上」というのは、相当なレベルになってきますので、本格
的にトラックの5000mや10000m、それにハーフマラソンなんかで記録を狙いたいといったようなアスリートレベルの問題になってきます。ただしフルマラソン以上になると、ちょっと考え方が違ってきちゃいますけどね。(こういうところが「長距離走」と「マラソン」の違いでもあると思います。)
そういうことですから、ソコソコで十分って方は、ここまでで仕上げちゃってもOKだと思います。ここから先は、「それ以上」のランナー向けの奥の深〜い部分です。

 心肺機能的に見た、いわゆるスタミナ・持久力といった部分は、8〜9割の力でトレーニングしていく中で、しっかりと10の力が向上していくという有り難い身体の仕組みになっているようです。ところが「速いペースを維持するための筋持久力」というのは、特に素質に恵まれてでもいない限り、どうもや
った分だけ、8なら8、9なら9の力しか付いてこないな、というのが実感としてあります。ほいじゃあ、レースに必要な力を10とすれば、10のトレーニングをするしかない、レースペースで走るしかないじゃないの!ってのが、スピードトレーニングを必要とするもう一つの理由ということになります。

 5000mの選手なら1000mを5本、10000mなら2000mを5本、20Kmなら5000mを4本…。こんな練習をレースペースでやってるのは、単にペースを体得する、といったような感覚的なものではなく、レースペースでレース距離を行ける筋持久力の養成的な意味合いも強いと思います。
そういう風に意識している選手や指導者は多くないかも知れませんが…。

 足で走るのか、心臓で走るのか。 ― 無意識のうちに心臓だけで走ると思っている、心臓さえ強ければ走れると思っている人ってのは意外と多いのかも知れません。