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 ★トレーニングのヒント (鈴木 彰)  目 次 へ
 

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​ 013~019(2000.4.25~6.19配信) 「80%ラン」

ようやくマラソンシーズンも終わりました。ヤレヤレといったところですが逆にいえば、やっと腰を落ち着けて根本的な立て直しや修正を計るにはもってこいの時期が来たことにもなります。

 さて先週まで、マラソンのスピード云々ってことで長らく引っ張ってきましたが、ちょうどいいので、これからの季節、10Kmを中心とした短い?距離でのスピード修得のトレーニングを考えてみましょう。読者の方には、フルマラソンやウルトラマラソンへの志向性の強い方が多いのではないかとは思いま
すが、秋以降(夏の北海道マラソン以降でも)の大幅なレベルアップのためにここはじっと我慢して「マラソン的スピード」のアップにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 キャリアの短い方・高齢の方・女性の方の場合、「スピード」アレルギー的な傾向も見受けられますが、この際しっかりと、この「マラソン的スピード」という概念からお勉強していきましょう。


●80%で走ってみよう!

 Vol.7で、トレーニング強度について触れましたが、これを使って10Kmのレースペースの80%で走るトレーニングに取り組んでみましょう。

 おさらい:80%の強度の出し方
 ───────────────────────────────
 1.レースペース(1Km)を秒に直す。
 2.秒速を算出する。=1000〔m〕/レースペース〔秒〕
 3.算出された秒速に係数(0.8)をかける。
 4.3.で算出された秒速を1000mのペースに戻す。
=1000/3.で算出された秒速
  
 ----------------------------------------------------------------- 
 例:レースペースが4分00秒の場合

 1.4分00秒 → 240秒
 2.1000/240=4.167  
 3.4.167×0.8=3.334
 4.1000/3.334=300(秒)
   =5分00秒
  ───────────────────────────────

 はい、わかりましか?

 なんで80%なのかというのは、おいおいご説明する機会もあると思いますが、効率良く持久力のつきやすい強度なんだということは認識しておいてください。「ん、持久力? スピードじゃなかったの!?」って、そこんところが「マラソン的スピード」のポイントですね。10Kmを速い速度で走り切れる持久力を養成することがマラソンのスピードをアップさせることだと言えば分かりやすいでしょうか。(却って分かりにくい?)

 ここでの注意点は、レースペースの設定です。マラソンのタイムではなく、10Kmのタイムを基準にしなければ意味がありません。ところが、フルマラソン一直線で来ている人にはご自分の10Kmの実力といってもよくわからんという方も少なくないと思います。ここのところで、だいたいの目安とか、こ
のくらいで走れたらいいな…といったようなちょっと高めの目標タイムを出してきちゃうと「80%」という目的自体がズレてきてしまいます。キッチリ・カッチリという必要もありませんが、ムチャクチャ大雑把でも困ります。

 取り敢えずは、ご自分の80%っていうのはどんなもんだか、ちょこっと試してみてください。

 * * *

 お試しになられましたか?80%ラン…。

 テストで80点取るというのはなかなかのものですが、レースペースの80%というのは意外にたいしたことないでしょう?10Kmのペースでもそうなのですからマラソンなら尚更ですね。ところがどっこい、そこんところに落とし穴があったりするものですから要注意です。

 10Kmの実力が45分という方ならば80%のペースは5分35〜40秒くらいになりますので、まぁ、このあたりのペースで走っている分にはいいのですが、ここのところで目標タイムを40分と設定するとトレーニングペースは5分00秒ほどになってきます。実力は45分だけど目標は40分。こうい
う状況下では、たいてい目標タイム40分の80%の方である5分00秒ペースで練習して行こうと考えちゃうものです。実際、45分の力はあるのですから、5分ペースくらいならそんなにキツくはないかもしれません。いや、これでも物足りないって方もたくさんいらっしゃるでしょうね。もっとイケる、も
っと頑張れる、だからもっと強くなれるはずだ!っていうタイプのランナー。

 ところが実際の力からすれば、トレーニングとしては、それがオーバーペースになってしまっていることも多いのです。こういうところの自重というのはとっても重要なところです。特に前を誰かが走っていると、どうしても追い抜きたくなっちゃうような性格の方は要注意です。

 また、生粋のマラソンランナーやウルトラ志向の方には、10Kmのレースの準備というのはちょっとキツいかもしれません。トレーニングがLSD中心の方は特にそうだと思いますが、そういう方にあえておすすめしているのが、この80%ランです。普段のトレーニングよりは少々速いかもしれませんが、
設定ペースさえ間違えなければ決して無理な練習ではないはずです。そうか、こういうトレーニングが不足していたのか…とお気付きになる方も少なくないのでは…?

 ただし、いかなる場合も自分自身の80%であることをお忘れなく。人に合わせたり、競り合ったりするのでは元も子もありません。
 
 80%というのは決して速くはありませんが、LSDのように遅くもありません。このあたりのコントロールが実は長距離・マラソントレーニングの真髄の部分だとも言えます。「トレーニング効率」というのが、ここのところのキーワードです。

 * * *

80%ランを実践された方々から、「非常に軽快に走れた。」「この程度のペースで走ればいいのかと思うと気が楽になった」等々のお声をいただきました。それと同時に「いつもこのペースで走ればいいの?」「どのくらいの距離を走ればいいの?」といった疑問の声も。さもありなん。

 80%ラン、やってみたら、なんだ、いつもと同じくらいのペースだった…って方もいらっしゃるでしょう。偶然にもいつも80%で走っていた。それはそれでOKなのですが、問題は、毎日そのペースで走っているんですか?ってことになります。

 80%水準で走るということは決してキツくはありませんが、ムチャクチャ楽でもありません。気持ちの面はともかく、身体的には、それ相応の負荷がかかっていると考えた方がいいでしょう。「抜き」のトレーニングなのか「ポイント」のトレーニングなのかと言えば80%ランはポイントの方になります。

 そもそも「抜く」とか、ポイントを「入れる」とかいう観念をご存知ない方も、必要ない方もあることと思います。週に2回とか3回とかしか走らないというような場合は、その走らない日が「抜き」、走る日が「ポイント」になりますので、あまり意識しなくても結構です。しかし、それ以上、特に毎日のよ
うに走っているということになると、抜きっぱなし、または(ポイントを)入れっぱなしというわけにはいきません。ポイントのトレーニングで負荷を身体にかけ、抜きのトレーニングでそこから回復することこそが諸機能の向上に必要な大原則だからです。トレーニングの頻度が多く、レベルが高くなるにつれ
強度の調整―「メリハリをつける」ということが重要な課題となるのです。このことから、80%ランを週に4回も5回も実践しているというのは明らかにオーバーワークということになりますね。

 トレーニングにおいては、自分の能力に応じて、うまくポイントを入れたり抜きを入れたりしながらメニューを消化してくことが何よりも大切です。80%ランは、このポイントの中で、その取り入れ方を自分なりに工夫していくことになります。抜きの部分は軽いJogでもお休みでもいいのですが、たとえ
ばおなじみのLSDにしても、初級者にとっては十分なポイントのトレーニングになりますが、上級者になると、2時間程度やっても半分休養みたいなものです。「LSD」というトレーニングの形態だけに目をとらわれず、自分自身にとっての強度と、他のトレーニングとの組み合わせの中でのメリハリをつけ
るということをトレーニング計画の立案の柱にしてください。

 どのくらいの距離を…というのはまた来週!

 * * *

まだまだ続きます。80%ランニング。ん、80%走?…何でもイイや。

 ハイ、今回はこの80%…ランで、どのくらいの距離を走ればいいのかということです。

 どのくらい、何メートル、何キロってことになるのですが、正直言って、科学的にこのくらいが最も適当、もっとも効率が良い、というお話ができる段階ではありありません。しかし、経験値的に言うと、概ねレース距離の1.2〜1.6倍くらいの距離をまず最初に基準にしてみてください。5000mなら
6000〜8000m、今は10Kmレースを想定して考えているわけですから、12〜16Kmくらいということになりますね。「80%くらいの強度で12〜16Km走る」のが10Kmレースのためのトレーニングだというのはふんふん、なるほどって感じがしますでしょ。

 もう、皆さん、お試しのことと思いますが、80%で走るということは、快調さや軽快さはあっても、それほどキツいペースではありません。しかし、このくらいの距離になるとどうでしょうね。経験値的な基準ですから、絶対、必ずこの距離でということもないのですが、80%でレース距離よりも短い距離
を走っても強くなれるのかといえば…。80%ランがポイントのトレーニングだというのはこういうところにあります。決してキツい走りではないのだけれど、しっかり身体には負荷がかかっている。この点が、お手軽に取り組める半面、油断のできないところです。いつでもできそうだけど、キッチリした体調
で臨み、翌日は「抜き」の練習も視野に入れたトレーニング計画が必要だということになります。

 結局、80%ランを1回やるためには、その1日前、1日後のトレーニングも考慮しなければならないわけですね。更にこの3日分の練習を考えるためには、1週間分の全体計画も必要です。ポイント練習というのは、なんでもそうなんですけど、こういうところの遣り繰りがトレーニング計画にメリハリをつ
けるためのキーになります。ただし、何をして「ポイント」というのか、「抜き」というのかは個人差があり、さらには(今回は触れませんが)「つなぎ」というのまであります。うーん…。

 ここまで読んできて、まだ疑問が2〜3つ以上残っている方はたいしたものです。まだまだ順次解説していきますのでご安心を。もう判ったつもりになっていた人は、13号あたりから、もう少し深く読み返してみてください。

 毎日ガンガン行って最後に大爆発する人もいれば、石橋を叩いても渡らない人もいます。どちらも強くなれないことでは共通しています。一番イイのは石橋を叩いて渡れると思ったらスーッと渡ることです。この意味がキッチリ理解できるようになれば、なかなかですよ。
                       
 ***



 80%ランニングは、目標とするレースの1.2〜1.6倍の距離で実施する。なるほど…そうか、そうするとマラソン練習は50Kmから70Km近い距離を走らなければならないってことか。全盛期の谷川真理選手は70Km走を頻繁に行うということで有名でしたが、だからと言って「そうか、やっぱり
そういうのをやらないとマラソンは走れないのか…。」なんて結論付けるのは少々早過ぎますよ。

 そもそも、今回は10Kmレースに備えたトレーニングを考えているわけです。長距離トレーニングの延長線上にマラソントレーニングがあることは否定しませんし、基本は同じことなのですが、同じなのはあくまでも基本だけ。そこから先は、やっぱりちょっと違います。いづれマラソントレーニングを解説
していく時期になった時に詳しくやっていきますけど。

 マラソンを始めてから10Kmのタイムが伸びないとか、ウルトラマラソンに本格的に取り組んでからフルマラソンのタイムが縮まらないとかいう話はよく聞きます。極論すれば、ある種目のトレーニングが別の種目に好影響をもたらすとは限らないわけです。確かに初級レベルくらいならば、ここのあたりは
「ランニング」とか「スタミナ」とかいう一つの枠でくくってしまうこともできなくもありません。走力というよりも、体力がアップするだけで5Kmでもマラソンでもタイムが向上することもあるでしょう。しかし、初期の、こういう経験が、その後のトレーニングのあり方や考え方を狂わすことだってあるの
です。

 一つのトレーニングの流れが、自分なりにしっかりと体系がとれていたとしても、そのトレーニングで、どんな種目(レース距離)でも対応できるとういうのは初級レベルのうちだけ。ある程度以上までくると、しっかりと種目別のトレーニングをしていかないと向上は難しくなってきます。10Kmとマラソ
ンどころか、厳密には5Kmと10Kmとでも違うのです。

 「レースペースからトレーニングの強度を求める」―このことは、レースの距離によってペースが異なることから、「レースの距離によって、トレーニングの強度を変える」ということになり、「トレーニングの強度によって、トレーニングの距離が変わってくる」ことにもなってきます。

 またまたややっこしくなってきましたが、このへんの意味を、次回からもう少しじっくり考えていくことにしましょう。

​ * * *

 多くの場合、トレーニングの強度というものは、"全力"に対する割合で表すことが多いようです。全力を100としたときに、80だの90だのっていう相対的な割合で示すわけですね。日本語でいう、「9割方」とか「8分の力」とかいうのと同じです。

 それでは、そもそも「全力で走る」というはどのような状態のことなのでしょう。100mを全力疾走する?マラソンで精も根も尽き果てるような走りをする?

 もっと科学的な言い方をするならば、乳酸値がどのくらい、最大心拍数がどうのこうのってことになるのでしょう。いづれはそういう話題にも突入するつもりですが、このコーナーは理論を実践に活かすことが目的ですので、乳酸や心拍数を測定できない、または測定できても、どう利用してイイのか判らない
方々が圧倒的に多数である市民ランナーの皆さんにお話するためには違ったアプローチからしていきたいと思っています。

 その乳酸値や心拍数云々から言えば、だいたいの目安として、1500mをMaxで行くときが全力くらいであるとお考え下さい。後半失速してタレちゃうような走りではダメですよ。1500mを追い込んで走った実力相応のベストタイムを全力、つまり100とすれば相対的な強度も出てくるわけですね。
ただ、1500mを完全に追い込んだ走りなどというのは言うほど簡単にはできませんから、出てくるタイムもだいぶ誤差が含まれていると考えなければならないわけですが、概ね、5Kmというのは全力の90〜95%、10Kmは85〜90%、そしてマラソンは80〜85%くらいの力でやってることにな
ります。(もちろんムチャクチャ個人差があります。)

 距離が長くなるほど追い込みの度合が低くなる(=強度が低くなる)というのは、誰がどう考えても当たり前すぎるくらい当たり前のことですね。そうすると、ある特定のペースでトレーニングをしていて、5Kmも10Kmも、そしてマラソンも強くなれるのかどうかという疑問が生じます。トレーニングの
強度が記録向上のために重要な要素で、しっかりとした設定をしていかなければいけない。ところが全力の80%でトレーニングするということは5Kmレ−スペースの85%、そして10Kmレースペースの90%だってことも出てくるはずです。それでは、どのくらいの強度でどんなトレーニングをすればい
いのかという方法論の根本がメチャクチャになってきてしまいますね。

 ここから先が「全力の○○%」と「レースペースの○○%」とでトレーニングペースを設定する場合の考え方の大きな違いであると言えます。別に全力を基準にすることを否定しているわえではありませんのでお間違えなく。理解し易さを踏まえた考え方の違いです。ってことで以下次号!

 * * *


 さて、妙にあちこちでご支持をいただけるようになってきた80%ランですが、さすがにいくつかの誤解や思い違いも生じているようですので、少しづつ修正を加えながら話を進めていきたいと思います。

 まず、80%ランの80という数字ですが、以前にもおことわりしたとは思いますが、それほど厳密に実施する必要はありません。そもそも100%にあたるレースペースの設定にどれだけの(実際の能力と適正な目標タイムとの)誤差があるのか判らないのですから、ここんところで1%速いの遅いの、Km
当たり5秒速いの遅いのって言ったって仕方ないでしょってことです。

 実を言うと、80というのは、75から90の間というくらいの意味しかありません。なんだ、いい加減だなって思われるかも知れませんが、実はここは非常に大切なところです。というのは、75%以下、あるいは90%以上では別のトレーニングになってしまうということなのです。

 別のトレーニング? 例えば10Kmという距離を、75%以下でも、90%以上でも、あるいはその間の強度でも走ることは誰にでも可能です。その日の体調や気分によって、結果的にはそのような変化をつけて走っておられる方もいらっしゃるでしょう。ところがこの強度の違いによって生じる身体機能の
向上・改善には、微妙に(明確に?)違うものがあるようです。

 いわゆる走り込みとか、距離踏みとか言われるトレーニングには、3段階の強度がある!?実はそうなんで、競技力を向上させるためには、これを下から段階的にやっていく必要があるわけです。

 この中から今回80%ランを集中的に取り上げてきたのは、何と言っても、市民ランナーの皆さんのトレーニングが、75%以下のトレーニングか、90%以上のトレーニングのどちらかに偏っていることが非常に多いからです。LSDを支持する・しないのという論争のラチがあかないのは、この2つのグル
ープ間で議論しているからだという部分もあります。

 それではなぜ最初から75〜90%ランと言わんのか!と怒られそうですがそう言うと、ギリギリ90%で行こうとする人と、ギリギリ75%で行こうとする人が必ず出てきますでしょ?自信とかやる気とか志向性の違いで。しっかりギリギリの範疇で走れればいいのですが、上にも下にも飛び出しちゃうと違
うトレーニングになってしまうわけです。前述したように計算が正しくても、はなっから設定に誤差があれば、この危険性があります。これを避けるためには、中頃の80〜85%くらいで実施するのが確実なわけです。競技者レベルですと、85%くらいの設定が有効なようですが、これは現段階の実力と目標
タイムとの能力差をかなり正確に掌握しているからこそできることで、市民ランナーの皆さんの場合は80%設定の方が良いですね。これは、設定する目標タイムが、根拠の無い願望タイムであることが多く、必然的にやや高過ぎる設定をする傾向が顕著だからです。

 健康のため、ダイエットのためというのならば、75%以下、60%くらいのところまで行っても全然OKであり、特に初級レベルですと、この強度でも持久力の向上は見られます。しかし、ある程度、改善・向上が進んだ後には、この中程度のトレーニングは非常に重要なポジションを占めます。

 そんなんで、こんなんで、80%ラン。