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ダイエットの前に知っておくべきこと
 〜拒食症と過食症〜

 昨今、「体重を減少させたい」という願いは、健康や美容、ファッション等の要素ともからみ、男女や年齢の区別無く広まっています。また、長距離走・マラソンなどにおいては、体重のコントロールが競技成績に影響することも知られており、「強くなるためにダイエットする。ダイエットのために走る。」ことも、常識であるかのように理解されています。ところが、しばしば、特に女性において、この体重を減少させたいという思いが、体重を減少させなければならないという強迫観念と変わり、多くの問題を引く起すことがあります。


拒食症(神経性食欲不振症

 時として、死亡例の報告等で社会問題となり、一般的にも認知されつつある拒食症ですが、単純なダイエットの失敗であるといった程度の認識が一般的です。ところが拒食症は、一種の精神的異常ですので、本人が気付かないうちに陥り、自律的な回復が困難であるという危険性があります。
 
 拒食症のパターン(女子長距離ランナーの場合)
   
「体重を減少させたい。」 ダイエットの開始 練習量の維持または増加と食事制限 
                   
減量効果 競技力向上 体調に異常無し 「ダイエットが上手くいった。もっと頑張ろう」
                   
減量継続 ボーダーライン突破 栄養失調 競技力低下 「ダイエットが足りないから走れないんだ」
                   
   さらに減量継続 食べることに対する嫌悪感 健康状態悪化 拒食症と診断


 ここでいう、ボーダーライント突破とは、至的体重を下回り、競技はもちろん、日常生活にも必要な栄養素の摂取が十分でないところまでダイエットが進行している状況をいいます。この段階では、回復力が低下し、疲労が蓄積、故障も増え、競技力向上どころではなくなります。さて、拒食症の難しさは、ここからで、周囲からすると、あきらかにやせ過ぎに見えるのに、本人だけはそうは思いません。それどころか「まだまだ、体重は落とせるし、落とせばきっと走れるようになる。食べなければもっとやせるはずだ。」と強く思い込みます。指導者や家族は「何を馬鹿なことを…」と、いくら言ってきかせても、本人は強固に信念を変えることはありません。前述したように、拒食症は精神的な病です。拒食症と診断され、「食べようとしても食べられない」状況が続く深層心理には、「食べてはいけない」という罪悪感、嫌悪感が潜んでおり、素人療法では、簡単に取り除くことは出来ません。周囲が異変に気付き、対処しているのにもかかわらず、回復せず命を落とすことがあるのは、このようなことからです。
 拒食症に、このような精神的な部分ある以上、本人が、それに気付き、積極的に回復へ努力することは極めて困難です。日頃から指導者や家族、チームメイトの観察や報告などを怠らないようにする必要があり、問題の早期発見と専門医への相談に務めてください。

 拒食症の症状  このような症状が確認されれば、拒食症の可能性を疑ってください。
   
   ・継続的な体重の減少。
   ・見るからにヤセ型になり、骨ばった体形になる。
   ・体重を計測する回数が増え、チェックすることに神経質になる。
   ・遅く寝て、早く起きる。
   ・月経不順
   ・手足の指先が青く変色し、冷たい。
   ・集団から離れ、単独で行動することが増える。
   ・みんなと食事をしたがらない。ちゃんと食べていると主張する。

 拒食症になりやすいのは、まじめで、内向的、目標達成意欲が高いタイプです。これは長距離選手には比較的多いタイプであるとも言えます。また、最初のきっかけが、指導者の「もっとヤセないとダメだ」という一言を胸に刻み込んだためであったという報告が多数あります。


過食症(神経性大食症)

 過食症は、拒食症に引き続き、あるいは同時に、その反動として起きることが多くあります。ストレス解消のための「気晴らし食い」は、女性には珍しいことではありませんが、競技者の場合、体重を維持・減少しなければならないという自制心との葛藤から、自己嫌悪感を持ち、体調の変調をもたらします。

 過食症のパターン(女子長距離ランナーの場合)
   
ストレスの発生「気晴らし食い」⇔「競技のため、体重を維持・減少させなければならない」
                    
自己嫌悪「食べてはイケないのに食べてしまった…」 嘔吐 焦り→過剰な食事制限
                    
「ストレス→過食→自己嫌悪→嘔吐→食事制限→ストレス」の悪循環

                          
 過食症は、拒食症に較べると、本人に悲壮感が見られず、また、目に見えて体重が増加することも少ないので、周囲が気付きにくい傾向があります。しかし、ここでいう嘔吐とが、自分で指を喉に突っ込む「自己誘発性嘔吐」であるように、内面的での精神的な葛藤は深刻で、拒食症よりも治療しにくいとされています。
 

過食症の症状  このような症状が確認されれば、拒食症の可能性を疑ってください。
   
   ・食事の後にトイレに行く(嘔吐するため)
   ・短期間に体重が増減する。
   ・体重を計測する回数が増え、チェックすることに神経質になる。
   ・夜、遅くまで起きている。
   ・単独行動をしたり、部屋にこもりがちとなる。
   ・コンビニ等での買い物が頻繁になる。

 女性の「気晴らし食い」は、人間関係や経済的な問題、将来への不安等、競技面も含めて、日常に起き得る様々な要素が原因となります。解決のためには、メンタル面でのカウセリングなどが必要ですし、自己嫌悪の根源となる体重調整においても、栄養面を含めた正しい知識と理解を持たせる必要があるのは拒食症も同様です。

 


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